浮気調査のGPSは違法?「夫婦なら平気」が崩れた条文と確定判決【2026年版】

「浮気 GPS 違法」と調べている方の多くは、まだ買っていないか、もう付けてしまったかのどちらかだと思います。

そして本当に怖いのは、捕まることそのものではないはずです。浮気をされた側なのに、自分だけが加害者の席に座らされて、慰謝料の話ができなくなる。そちらのほうがずっと怖い。この不安には、法律の側にちゃんと理由があります。

この記事は、体験談ではなく条文と、確定した判決だけで線を引く記事です。「ケースバイケースです」で終わらせません。車の名義とどこに付けたかで、あなたの状況がどこに当たるかまで判定できるようにしました。

使う材料は3つです。e-Govの法令原文(ストーカー行為等の規制等に関する法律/探偵業の業務の適正化に関する法律)、警察庁が公表している改正内容、そして旭川地方裁判所から札幌高等裁判所まで進んで確定した民事の判決。ネット記事の孫引きは使いません。

\最初に結論/

この記事を書いた人
  • 20社の探偵事務所に取材し業界の裏側を調査
  • 300人以上の浮気体験談をインタビュー
筆者の想い(タップして開く)

これまで数多くの浮気相談を聞く中で、自分一人で調査を抱え込み心も体も疲弊してしまった方を数多く見てきました。修復したい方も、別れたい方も、判断するためには「事実」が必要です。一人で抱え込まず、まずはプロの無料相談だけでも使ってみてください。選択肢が一つでも増えれば、あなたの心は少しだけ軽くなります。あなたは悪くない。違和感を見過ごせなかったあなたの感性は、家族を守る力です。

目次

浮気調査のGPSが「違法」かどうかは、4つの質問に分かれている

最初にここを分けておかないと、読んでも自分の答えが出ません。ネット上の記事が読むたびに違うことを言っているように見えるのは、書き手ごとに別の質問に答えているからです。

この4つは、答えがバラバラになります。順に見ていきます。

1. 刑事で罪に問われるか

ここで出てくるのがストーカー行為等の規制等に関する法律、いわゆるストーカー規制法です。2021年の改正で「位置情報無承諾取得等」という枠が作られ、承諾なくGPS機器を取り付ける行為と、そこから位置情報を取得する行為が規制対象に入りました。警察庁の資料によれば、この部分の施行は2021年8月26日です。

ただし条文には条件が付いています。ここを飛ばしている解説記事が多いので、次のH2で条文そのものを引きます。結論だけ先に言うと、1回付けただけで直ちに逮捕、という作りにはなっていません。刑事罰が科される「ストーカー行為」は反復が条件だからです。

ただし「1回ならセーフ」と読まないでください。同じ法律の第3条は、位置情報無承諾取得等をして相手に不安を覚えさせること自体を禁じていて、こちらに反復の条件は付いていません。1回でも第3条違反として、警告や禁止命令の対象になり得ます。罰則に届かないことと、法律に触れないことは違います。

また、GPSを取り付けるときの動作そのものが別の罪に触れることがあります。相手の家の敷地に入れば住居侵入、車体を削ったり穴を開けたりすれば器物損壊です。こちらは「浮気調査だから」という事情で消えるものではありません。

2. 民事で賠償させられるか

刑事とはまったく別のルートです。位置情報を無断で取られた側が、プライバシーを侵害されたとして損害賠償を請求する。こちらは警察も検察も出てきません。相手が弁護士を立てれば、それだけで始まります。

そして実務でいちばん現実に起きるのがこの2番です。2024年から2025年にかけて、まさにこの形で判決が出て、確定しました。中身は3つ目のH2で詳しく書きます。

3. 集めた記録は証拠になるか

意外に思われるかもしれませんが、民事の裁判では、違法な手段で集めた資料でも証拠として扱われることがあります。刑事事件のように「違法収集証拠は排除」と一律に切られるわけではなく、著しく反社会的な手段で人格権を侵害して集めたものでない限り、証拠能力自体は認められる方向で判断されるのが一般的な整理です。

ただしこれは「使えるかもしれない」という話でしかありません。そもそもGPSのログには、不貞行為を示すものが何も写っていないという、もっと手前の問題があります。ここは6つ目のH2でまるごと扱います。

4. 交渉で不利になるか

4つの中で、いちばん軽視されていて、いちばん効いてくるのがこれです。

離婚と慰謝料の話し合いは、法廷に行く前の段階で相当量が決まります。そこであなたが「GPSを付けた人」になっていると、話の主題がすり替わります。夫の不貞の話をしたいのに、相手の弁護士は毎回あなたの監視行為の話から始める。金額の問題ではなく、話の順番を奪われることが痛いのです。

刑事のリスクは条件が揃わなければ現実化しません。民事の賠償額も、後で見るように不貞の慰謝料に比べれば小さい。それでもわたしがGPSを勧めない理由は、この4番目にあります。

条文はこう書いてある|「その所持する物」と、見落とされる目的の条件

ここからは法令原文を見ます。e-Govで公開されているストーカー行為等の規制等に関する法律の第2条第3項です。長いですが、必要なところだけ切り出します。

規制されている3つの行為

第2条第3項は「位置情報無承諾取得等」を定義していて、中身は3つの号に分かれています。かみ砕くとこうなります。

  • 1号:承諾なく、相手が所持するGPS機器等の位置情報を取得すること
  • 2号:承諾なく、相手が所持する紛失防止タグの位置情報を取得すること
  • 3号:承諾なく、相手が所持する物にそれらの装置を取り付けること

注目してほしいのは、3つとも「その所持する」「その所持する物」と書かれている点です。基準になっているのは登録名義ではなく、誰が現に持っていて使っているかです。

だから「車の名義はわたしだから大丈夫」という理屈は、条文の文言のうえでは通りません。名義があなたでも、日常的に運転して所持しているのが夫であれば、その車は夫が所持する物として扱われる余地があります。逆に、あなたが毎日乗っている車に自分でタグを入れておくのは、そもそもこの条文の話ではありません。

なお、この記事は妻が夫を疑っている状況を前提に書いていますが、条文は性別も続柄も区別していません。夫が妻を疑って車に取り付けた場合も、まったく同じ条文が同じように働きます。読み替えてお使いください。

頭に付いている「目的」の条件

ここが、ほとんどの解説記事が落としている部分です。第2条第3項は、3つの号の前に次の条件を置いています。原文のまま引きます。

特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で

ストーカー行為等の規制等に関する法律 第2条第3項(e-Gov法令検索)

つまりこの法律が捕まえようとしているのは、恋愛感情や、それが満たされなかった恨みを満たすための位置情報の取得です。「離婚に向けて不貞の証拠を集めたい」という目的が、そのままここに当てはまるとは限りません。

ただ、これを「じゃあ夫婦は対象外だ」と読むのは危険です。理由は3つあります。

  • 目的をどう認定するかを決めるのはあなたではなく、警察と裁判所である
  • 裏切られた配偶者の行動は「怨恨の感情」と評価される余地が十分にある
  • 刑事で対象外でも、次に見る民事の賠償はまったく別に成立する

条文を正確に読むことと、安全だと判断することは違います。ここは「グレーだからやめておく」ではなく、グレーの中身を知ったうえでやめておくところです。

反復して初めて罰則の話になる

同じ法律の第2条第4項は「ストーカー行為」を定義していて、位置情報無承諾取得等を反復してすることがその条件になっています。そして第18条が罰則です。

ストーカー行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

ストーカー行為等の規制等に関する法律 第18条(e-Gov法令検索)

GPSを車に付けっぱなしにして位置情報を見続ける行為は、性質上どうしても反復になります。「1回だけ確かめるつもり」で始めたはずが、1週間後には毎朝アプリを開いている。それが反復です。

あわせて知っておきたいのが、罰則の前に警告と禁止命令という段階があることです。第4条では警察本部長等が警告をでき、第5条では公安委員会が禁止命令等を出せます。禁止命令に違反すれば第19条で二年以下の拘禁刑または二百万円以下の罰金と、一段重くなります。

2025年の改正でAirTagも明文に入った

2026年に入ってから読む人に、いちばん知っておいてほしいのがこの改正です。警察庁の公表によれば、ストーカー規制法の改正法は令和7年12月10日に公布され、主要部分が令和7年12月30日に施行されました。追加された内容は次のとおりです。

  • 紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等が規制対象行為に追加
  • 職権での警告の創設
  • 相手方の雇用者と就学先の学校長を、援助の努力義務の主体に追加
  • 違反行為の発生地の公安委員会も禁止命令の主体に追加

2つ目の「職権での警告」が、実務では効きます。従来は基本的に相手方からの申出が起点でした。改正後の第4条第1項は「その相手方の申出により、又は職権で」と書かれています。相手が警察に届け出なくても、警察の判断で警告が出せる形になったということです。

そして1つ目。数百円から数千円で買える紛失防止タグを、財布やバッグやコートのポケットに入れておく方法は、以前は条文の外にあると言われることがありました。今は明文で対象です。GPS発信機を避けてタグに切り替える、という抜け道はもう残っていません。なお情報提供通知に関する部分は令和8年3月10日に施行されており、この記事を書いている2026年9月時点ではすべて動いています。

「夫婦なら平気」が崩れた判決|旭川地裁から札幌高裁へ、そして確定

刑事の話をここまで読んで、「目的の条件があるなら、まだ大丈夫かも」と思った方に読んでほしいのがここです。実際に賠償が命じられたのは、刑事ではなく民事でした。

「夫婦なら平気」が崩れた判決|旭川地裁から札幌高裁へ、そして確定

何をして、いくら払うことになったか

旭川地方裁判所が令和6年3月22日に出した判決です。報道と、判決を紹介している法律実務家の解説によると、事案の骨格はこうです。

  • 妻からの依頼を受けた探偵業者が、原告らの使用する車両にGPS機器を取り付けた
  • 取り付けの期間は令和4年3月14日から4月5日までと報じられている
  • 裁判所は、位置情報の無断取得はプライバシーの侵害にあたると判断した
  • 一審は探偵業者に対し、計44万円の支払いを命じた

そして重要なのはこの先です。双方が控訴しましたが、札幌高等裁判所は令和7年1月31日、一審判決を維持して双方の控訴を棄却しました。地裁の一事例ではなく、高裁を通って確定した判断だということです。

金額そのものは大きくありません。不貞の慰謝料が一般に150万円から300万円程度を目安に語られることを考えれば、桁が違います。それでも、この判決が意味を持つのは金額ではなく、配偶者であっても本人の承諾なく位置情報を取ればプライバシーの侵害になる、という線が高裁まで通って残ったことにあります。

「おおむね30分間隔」が意味すること

報道によると、判決は「おおむね30分間隔で位置情報などを把握しており、プライバシー侵害の程度は大きい」と述べています。この一文は、これからのケースを読むうえでかなり大事です。

裁判所が見ているのが「GPSを付けたか付けなかったか」の一点ではなく、どれくらい細かく、どれくらい長く追ったかだと分かるからです。30分ごとに座標が並ぶログは、寄り道も、駐車場での滞在時間も、帰り道を変えたことも全部残します。行動の再現度が高いほど侵害の程度が重く評価される、という読み方ができます。

市販のGPS発信機は、取得間隔を1分や5分に設定できるものが珍しくありません。細かく設定するほど「証拠として使える」ように感じますが、この判決の理屈で言えば逆です。細かく取るほど、あなた側の侵害が重くなります。

探偵に頼めば合法、ではない

この事案で支払いを命じられたのは、依頼した妻ではなく探偵業者でした。ここから「じゃあプロに任せれば自分は安全なのか」と考えたくなりますが、法律はそう作られていません。

探偵業の業務の適正化に関する法律、いわゆる探偵業法の第6条を引きます。

探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。

探偵業の業務の適正化に関する法律 第6条(e-Gov法令検索)

探偵業の届出をしていても、それによって他の法令で禁じられた行為ができるようになるわけではない。法律が自分でそう書いています。「探偵は許可を持っているからGPSも使える」という説明は、この条文と正面から矛盾します。

そもそも第2条第1項の探偵業務の定義は「面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い」です。装置を取り付けて放置し、あとから座標を眺める行為が、この「実地の調査」に含まれるかどうかは、法律実務家のあいだでも疑問が出ています。

もうひとつ、依頼する側も無関係ではありません。第7条は、探偵業者は契約時に依頼者から「調査の結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面」の交付を受けなければならないと定めています。あなたはこの書面に署名する側です。

ここで正確に区別しておきたいのは、第7条が縛っているのは調査結果の使い道であって、調査の手段ではないということです。GPSを使うかどうかは第7条ではなく、第6条とストーカー規制法の側の話になります。両方あるのだと理解しておいてください。

あなたのケースはどれか|名義と設置場所で分かれる5パターン

ここまでの条文と判決を、そのまま自分の状況に当てはめられる形にします。「ケースバイケース」で終わらせないための表です。

夫名義の車に取り付けた

いちばん危ない形です。所持しているのも名義も夫なので、第2条第3項3号の「その所持する物に取り付ける」に真正面から当たります。そこから位置情報を取れば1号にも当たります。

民事でも、旭川の事案と構図が同じです。相手が弁護士に相談した瞬間、プライバシー侵害の請求が返ってくると考えておいたほうがいいと思います。

自分名義だが夫が日常的に乗る車

「わたしの名義だから自由にしていい」と考えられがちなパターンです。実際、名義があることで器物損壊の問題は起きにくくなりますし、車を触ること自体は正当化しやすくなります。

ただ、条文が見ているのは名義ではなく所持です。通勤で毎日夫が運転しているなら、その車を所持しているのは夫だと評価される余地があります。民事のプライバシー侵害についても、追跡されているのは車ではなく夫という人の行動なので、名義では防げません。

名義で安全になると書いている記事を見かけたら、その記事が名義と所持を区別しているか確かめてみてください。区別していない記事は、条文を読まずに書かれています。

浮気相手の車・敷地に入って付けた

ここは一段違います。相手は配偶者ですらないので、夫婦間だから、という説明が一切効きません。

そのうえ、設置のために敷地に立ち入れば住居侵入の問題が乗ります。マンションの機械式駐車場や、施錠された敷地内であればなおさらです。ここまで来ると、浮気の証拠を取るはずの行動が、こちらの刑事事件のきっかけになります。

浮気相手の身元を知りたいという動機自体は自然なものですが、手段はまったく別に選べます。身元の割り出しをどう進めるかは浮気相手の身元を突き止めた人たちの進め方にまとめてあるので、相手側に手を出す前にそちらを見てください。

夫のバッグ・財布・スマホに仕込んだ

位置情報とは別に、相手のLINEを確認しようとしている方も、操作する権限を先に確かめてください。履歴が消えていた場合は、消えたLINEの復元条件と、無断アクセスを避けて残せる記録を整理しています。

2025年12月の改正で、ここがはっきりしました。紛失防止タグを相手が所持する物に取り付ける行為は、明文で規制対象です。バッグ、財布、コートのポケット、キーケース。どれも「その所持する物」です。

スマホに位置情報の共有機能を無断で設定する方法も、同じ発想で見られます。加えて、相手のアカウントにログインして設定を変えたのであれば、位置情報の話とは別に、不正アクセスの問題が出てきます。スマホを見ること自体をどこまでやっていいかは相手に気づかれずに確かめる方法をまとめた記事のほうで整理しています。

自分も乗る車に置いてある

5つの中で、唯一グレーの度合いが下がるのがここです。あなた自身が日常的に乗っていて、あなたが所持していると言える車に、あなたの持ち物として機器が置いてある状態。これは「相手が所持する物に取り付ける」という条文の形とは違います。

ただし現実には、この形はほとんど役に立ちません。あなたが乗っている車に夫が乗る機会が限られているから疑っているわけで、たまたま夫が使った日の座標だけでは何も分かりません。グレーが薄いパターンほど、取れる情報も薄いという関係になっています。

車の行き先を知りたいだけなら、機器を仕掛けなくても残っている記録があります。カーナビの履歴から行き先が分かった話はその代表例です。

参考記事:優良な探偵事務所の紹介サービス「街角相談所 -探偵-」はなぜ人気なの?口コミを集めてみた!

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もう付けてしまった人が、今日やること

ここまで読んで、手が冷たくなっている方がいると思います。すでに付けている人向けの話は、どの記事にも書かれていません。順番だけ整理します。

まず取得を止める

刑事のほうは反復が条件で、民事のほうは期間と取得間隔が評価に効きます。どちらの軸でも、今日から先の日数を増やさないことが最優先です。

やることは2段階です。1つ目、アプリでの位置情報の取得をやめる。追跡を続けている限り、日数は毎日伸びます。2つ目、機器を回収する。ただしこの2つ目は、相手がまだ気づいていないかどうかで対応が変わります。

まだ気づかれていない場合は、相手が車を使っていない時間帯を待って回収してください。急いで外す必要はありません。取得さえ止めていれば、日数はもう伸びません。

すでに見つかっている場合は、こっそり回収に行かないでください。相手が写真を撮っている可能性が高く、そこから機器が消えれば、隠したという事実がもう一つ増えるだけです。この段階では回収より、弁護士に相談する順番を先にしてください。

回収のときに車体を傷つけないことも大事です。取り付けよりも、外すときのほうが焦って傷をつけます。外した機器は、捨てずに手元で保管しておいてください。取得間隔の設定や稼働期間は、後で「どの程度の追跡だったか」を説明するときの材料になります。処分してしまうと、その説明ができなくなります。

取ったログをどう扱うか

すでに取ってしまった座標のデータを、慌てて全部消す必要はありません。むしろ考えるべきは「何に使うか」です。

ログを弁護士や探偵に見せる場面では、証拠としてではなく、行動パターンの下書きとして渡すという使い方があります。木曜の夜だけ帰りが遅い、月に2回だけ同じ方向へ向かう。こうした傾向が分かっていれば、調査の日数を絞り込めます。日数が減れば費用も下がります。

逆にやってはいけないのは、そのログを相手に突きつけることです。突きつけた瞬間に、あなたが取り付けたことが確定します。取得の事実を相手に渡すことになるので、いちばん高くつきます。

問い詰められたときの線

相手が機器を見つけて問い詰めてきた場合、嘘を重ねるほど状況は悪くなります。かといって、聞かれてもいないことまで説明する必要もありません。

この段階で相手が弁護士に相談していると分かったら、こちらも早めに弁護士へ相談してください。慰謝料の請求と、プライバシー侵害の請求が同じテーブルに乗るので、その順番を組み立てられる人が必要になります。無料相談の枠で足ります。

ここまで来ると、証拠の集め方の話は自分ひとりで抱えられる範囲を超えています。証拠がまだ手元にない段階でどう相談すればいいかは、証拠がない状態から相談した人たちの流れが参考になります。

そもそもGPSは、不貞の証拠にはならない

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。違法かどうか以前に、GPSは目的を果たしません。

ログに出るのは場所と時間だけ

GPSのログが教えてくれるのは、緯度と経度と時刻の3つです。ここから分かるのは「車がその場所に何分停まっていたか」までです。

車がラブホテルの駐車場に2時間停まっていた。これは強い情報に見えます。でも、そこに書かれていないことを並べるとこうなります。

  • 誰が運転していたか(同僚に貸したと言われたら終わり)
  • 誰と一緒だったか(同性の同僚だった可能性を消せない)
  • 建物に入ったかどうか(隣の駐車場に停めただけかもしれない)
  • 中で何をしていたか

不貞行為の主張は、この4つを埋めて初めて成り立ちます。GPSのログは1つも埋めません。

必要なのは「二人で」「出入り」の記録

実務で求められるのは、肉体関係があったと推認できる形の記録です。具体的には、二人でホテルに入る場面と出る場面が、日時つきで、同一人物だと分かる形で残っていること。同じ日の入りと出がそろっていること。それが複数回あること。

この形の話は不貞行為の証拠として認められる種類のほうで細かく整理しています。読むと、GPSがどの位置にも入っていないことが分かるはずです。

そして、自分でこの記録を撮ろうとするときに次に問題になるのが、撮り方です。撮影の方法を間違えると今度は別の違法性の話になります。線引きは証拠写真が盗撮にならない撮り方にまとめました。GPSをやめて自分で撮ろうと考えている方は、先にそちらを読んでからにしてください。

証拠能力があっても足りない

冒頭で書いたとおり、民事では違法に集めた資料でも証拠能力が否定されないことがあります。ここだけを取り上げて「だからGPSでも大丈夫」と書いている記事があります。

ですが、証拠能力があることと、その資料で不貞が認められることは別の話です。裁判に出せる、ということと、出したら勝てる、ということはつながっていません。出せるけれど何も証明しない資料のために、賠償のリスクと交渉の主導権を差し出すのが、GPSという選択肢の正体だと思っています。

GPSを使わずに、同じ情報を取る

ここからが本題です。GPSで知りたかったのは「どこに行っているか」で、その目的自体は正当です。手段だけを替えます。

自分でできる範囲を先に使い切る

機器を仕掛けなくても、すでに家の中に残っている記録があります。順番に見ていくと、GPSでやろうとしていたことの多くはここで足ります。

  • カーナビの目的地履歴と、走行距離の増え方
  • ETCの利用明細に残る日時とインターチェンジ
  • クレジットカードとICカードの利用日時
  • 共有しているカレンダーの予定と、実際の帰宅時刻のずれ

大事なのは、これらを「証拠」ではなく曜日と時間帯を絞り込む材料として使うことです。木曜の夜が怪しい、と分かっているだけで、調査は何日も短くなります。行き先を割り出す手順は行った場所がわかる方法をまとめた記事に一覧にしてあります。

逆に、自分で車を追いかけるのはおすすめしません。信号ひとつで見失いますし、見失うだけならまだしも、気づかれたときの代償が大きすぎます。実際にどこで失敗するのかは車での尾行でつまずいた人たちの話を読むと分かります。

見積もりで最初に聞く質問

探偵に頼むと決めたら、料金より先に聞いてほしい質問があります。

「調査でGPSを使いますか」。

この一言です。旭川から札幌高裁まで進んだ事案で支払いを命じられたのは、依頼した妻ではなく探偵業者のほうでした。つまり、使う会社は自分たちが訴えられるリスクを抱えたまま営業しているということです。そういう会社に自分の調査を預ける理由はありません。

聞いたときの答え方も見てください。「使いません」とだけ返す会社と、「使いません。理由は判決が出ているからです」まで返す会社では、担当者の知識量が違います。あわせて、次の3つも同じ電話で聞けます。

  • 報告書は郵送以外で受け取れますか
  • 調査の時間単価に何人分が含まれますか
  • 延長になったときの単価はいくらですか

この3つは、答え方の丁寧さがそのまま料金の透明度に直結します。時間単価の中身をどう読むかは浮気調査の費用相場をまとめた記事に書いてあるので、見積もりが返ってきてから照らし合わせてみてください。

同じ質問を複数社にする理由

1社に聞いただけでは、その答えが業界の標準なのか、その会社だけの方針なのかが分かりません。同じ質問を3社にすると、答えが割れる場所が見えます。割れた場所が、その会社の考え方が出ているところです。

比較のときに何を並べればいいかは探偵社を比較するときの見るべき項目にまとめています。料金だけを横に並べても差は出ません。

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よくある質問

夫婦なら車にGPSを付けても違法にならないのでは?

夫婦だからという例外は条文にありません。ストーカー規制法第2条第3項は「その所持する物」に取り付ける行為を規制対象にしていて、名義や続柄では区別していません。民事でも、旭川地裁令和6年3月22日判決が配偶者の依頼によるGPS設置をプライバシー侵害と判断し、札幌高裁令和7年1月31日で双方の控訴が棄却されています。

車の名義が自分なら大丈夫ですか?

条文が見ているのは名義ではなく、誰がその物を所持しているかです。名義があなたでも、日常的に運転しているのが夫であれば、夫が所持する物として扱われる余地があります。名義があることで車体を触る正当性は増しますが、追跡されているのは車ではなく夫の行動なので、民事のプライバシー侵害は名義では防げません。

1回だけなら罪になりませんか?

刑事罰の対象になる「ストーカー行為」は、第2条第4項で反復してすることと定義されています。ただしGPSは付けた時点から位置情報を取り続ける仕組みなので、1回の設置でも取得は反復になりがちです。また、反復に至らなくても第3条違反として警告や禁止命令の対象になり得ますし、民事の賠償は回数と関係なく成立します。

AirTagのような紛失防止タグならセーフですか?

2026年時点ではセーフではありません。警察庁の公表によれば、令和7年12月10日公布・同年12月30日施行の改正で、紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等が規制対象行為に追加されました。GPS発信機を避けてタグに替えるという抜け道は、現在の条文では残っていません。

探偵に頼めばGPSも合法になりますか?

なりません。探偵業法第6条は、探偵業者について「この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意する」と定めています。届出があっても他の法令の禁止は解除されません。実際、旭川の事案で支払いを命じられたのは依頼者ではなく探偵業者のほうでした。

相手が警察に届け出なければ問題になりませんか?

その前提は2025年12月の改正で変わりました。警察庁の公表によれば、この改正で職権による警告が創設されています。改正後の第4条第1項も「その相手方の申出により、又は職権で」と定めており、相手方からの申出がなくても警察の判断で警告が出せる形になっています。

GPSで取った記録は裁判で使えますか?

民事では、著しく反社会的な手段で人格権を侵害して集めたものでない限り、証拠能力自体は認められる方向で判断されるのが一般的な整理です。ただし証拠として出せることと、それで不貞が認められることは別です。ログに残るのは緯度・経度・時刻だけで、誰が運転し誰と一緒だったかは何も示しません。

もう付けてしまいました。今すぐ外すべきですか?

まず位置情報の取得を止めてください。刑事は反復が条件、民事は期間と取得間隔が評価に効くので、今日から先の日数を増やさないことが最優先です。機器の回収は、相手が車を使っていないタイミングを待って、車体を傷つけないように行ってください。焦って外すと器物損壊の問題が新しく増えます。

取ってしまったログは消すべきですか?

慌てて消す必要はありません。証拠として使うのではなく、曜日や時間帯の傾向をつかむ下書きとして扱ってください。怪しい曜日が絞れていれば調査日数が減り、費用も下がります。やってはいけないのは、そのログを相手に突きつけることです。取り付けた事実を自分から確定させることになります。

賠償額が20万円台なら、払ってでも証拠を取ったほうが得では?

金額だけを見ればそう見えますが、失うのは金額ではなく交渉の順番です。話し合いのたびに相手側があなたの監視行為から話を始めるようになり、夫の不貞が主題でなくなります。しかもGPSのログは不貞の証明にならないので、支払う側に回ってまで得られるものがありません。

浮気相手の車に付けるのはどうですか?

配偶者ですらないので、夫婦間の事情という説明が一切効きません。さらに、設置のために敷地に立ち入れば住居侵入の問題が加わります。相手の身元を知りたいという動機は自然でも、手段は別に選べます。相手側の車や住居に手を出すのは避けてください。

GPSを使わない探偵は、どうやって行き先を掴むのですか?

探偵業法第2条第1項が定める探偵業務は、面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法による実地の調査です。行き先は複数人での尾行と張り込みで押さえます。だからこそ、こちらが曜日と時間帯を絞り込んで渡せるほど、日数が減って費用も下がります。

まとめ|手段を替えても、知りたいことは変わらない

整理します。

  • 条文が見ているのは名義ではなく「その所持する物」。名義では守れない
  • 刑事には目的と反復の条件があるが、民事の賠償はそれとは別に成立する
  • 旭川地裁令和6年3月22日から札幌高裁令和7年1月31日まで進んで確定している
  • 2025年12月の改正で紛失防止タグも対象になり、職権での警告も設けられた
  • 探偵業法第6条により、探偵に頼んでも他の法令の禁止は解除されない
  • そもそもGPSのログには、誰と一緒だったかが何も写らない

わたしは探偵20社に取材し、300人以上の方に話を聞いてきた立場でこの記事を書いています。そのうえで条文と判決を並べて思うのは、この問題の本当の分かれ目は証拠を取れるかどうかではなく、手段を選び間違えて、話し合いの主導権を先に手放してしまうかどうかだということです。

今日やることは1つで足ります。カレンダーを開いて、この1か月で帰りが遅かった日に印を付けてください。曜日が偏っていれば、それがあなたの持っている一次情報です。GPSより正確で、しかも誰も傷つけません。

これから買おうとしていた方は、カートを閉じて、代わりにカーナビの目的地履歴とETCの利用明細を見てください。機器を仕掛けなくても、家の中にはもう記録が残っています。すでに付けてしまった方は、今日のうちに取得を止めるところまでで十分です。

そのメモができたら、相談のときに最初の1問を投げてください。「調査でGPSを使いますか」。答えと、答えの理由の説明の仕方で、その会社の中身が見えます。同じ質問を複数社にすると差がはっきりするので、条件をまとめて送って返答を並べるところから始めるのがいちばん早いです。

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